蝉時雨の中で 〜 私が いなくなっても

病室は 酷く暑かった

病院では 冷房が 入らない
大きく開けた窓から
夕方
強い 西日が 射し込む

もう4時半

少し 早いけど
病院では
夕食の時間だ

百合子は 入院してから
ソースが 食べたかった

アツアツの 揚げたてトンカツに
広島の
甘目の 濃い味ソース

そんなもの
病院では 出ない、出るはずがない🤣



今日は もやしの
おひたし

人参と
チーズのソテー

若布の味噌汁

お粥みたいな 柔らかいご飯🍚

メインは
豚肉の しゃぶしゃぶ風 ポン酢がけ

美味しそう

トンカツには程遠いけど🤣



「ママ〜」

元気良く 娘
次女のマナが
病室に やって来た

マナは
まだ 小学5年生

背は伸びたが
まだ
母の私を
追い越す程ではない

マナは 愛と書く

可愛くて 愛おしくて

他の名前が 思いつかずに
生まれた時に
即決だった





「お母さん 変わりない❓」

長女の 麗
中学2年生 もうすぐ 受験生だ

身も心も 綺麗に 育って欲しくて
思い入れたっぷりに
つけた名前は
本人に 重荷ではなかったか

冷静で 頭が良くて

道を踏み外しそうもない 麗

「大丈夫よ

お姉ちゃんはちゃんと 食べてる❓
学校は いつから 夏休み❓」

夫は 遅れて病室に やって来た

「らいでん 西瓜🍉買って来た
今年の初モノ

食べ切れないから
ナースステーションに 
まるごと 預けて来たよ」
と屈託がない

「あらあら
ナースステーションは
差し入れ
全て お断りなんだけど」🤣

「たまには 良いだろ
 熱中症対策❗️
こんなに 暑くちゃ
みんな 伸びちゃうよ
大きく 水分補給」

「まるごと
一個の西瓜
久しぶりに 見た」

麗が 珍しく
はしゃいでいた

食堂で まるごと
食べやすくカットしてもらい

ナースさんたち
日勤の ドクターにも
病室の みんなにも
らいでん西瓜を
振る舞わせて頂いた


みんな 笑顔になった

西瓜の 嫌いな人なんて
あまり
聞いたことないものね

夫の
優しさに
みんなが
喜んだ



「美味しいなぁ
マナは
西瓜大好き💕」

マナは もうすぐ
お誕生日

私の 退院が 間に合わず
残念で ならない

病室で
小さいケーキを
家族で
食べることにした

次の 日曜に 買って来るよ

ご近所さんの
アメイジングの
ショートケーキ🍰

アメイジングは 地元で 人気の
ケーキ屋さんだ

私は 「モンブランにしてね」と
麗に 頼んでおいた

アメイジングなら
モンブランでしょ

来週は
西瓜の代わりに
ケーキが 病室に運ばれる

ケーキの日は 直ぐにやって来た

マナは 今日で11歳

ケーキは🍰 
どれも 小さいものにした

それぞれ
好きなケーキを 選ぶのも楽しいものだ

パパは 桃の🍑タルト

マナは
苺の ショート

麗は
梨の🍐タルト

そして 百合子は
モンブランであった

ハッピーバースデー🎉 マナ

来年は
ママが おうちで ケーキを 焼くからね



ケーキの日
マナの誕生日から 1週間経った

今年は 何故 こんなに 暑いのだろう

夜中でも 明け方でも
眠れない💦

百合子は
食欲がなく

栄養士さんに 頼んで
主食を お粥に
してもらい

それでも
食べられない

吐き気が 酷くなって
食べても

全部吐いてしまう

食欲不振と 嘔吐
めまい
不眠
手足の 痺れも 少しある🤏

看護師さんに 不調を 訴えた

念のために
MRIを 撮ろうと 直ぐに 決まった

午後から x線室に
予約済み

MRI

何度撮っても
好きにはなれない

ガンガン
頭の芯まで 響く音

大嫌い
MRIって
まるで 人生の 罰ゲームみたいだ


診察室へ

いつもの主治医 森本先生が 
目の前に すわった

「長谷部 百合子さん
 もうすぐ退院という時に
まさかの
大変 緊急な事態です 撮影で
小さな 脳梗塞が
発見されました

痺れ 嘔吐も🤮 そのためですね

少し 治療をして
様子を 見ましょう

ご家族には 私から
今夜 お話しします

同席されますか?」

「はい、もちろんです」

夫は 慌てて 飛んで来た

営業だが 今日は 病院ということで
融通が 効いたようだ

「森本先生から
夜に 緊急のお話って
どうした❓」と
夫からは LINEが あったので
脳梗塞の 再発のことは
さっくり 伝えておいた

「もう いつ退院かと思っていたのに」と
夫は 顔色を 変えた

手術はなしで
注射と
投薬で

今回 様子見となった

娘たちには 夫がうまく
話してくれることになった

ママは もう少し治療が 必要で
入院が 少し伸びた

マナの 小学校の
秋の運動会の頃には
多分 退院できそうな見込みのようだ、と



2週間治療して
個室で 安静にして

百合子は 一晩だけ 帰れることになった

土曜の昼に 自宅へ 帰って
日曜の夜に
また 病院に帰る🏥 

一時帰宅は 退院前の
お試しのようなものだ

もう
7月の後半

広い
マンションの リビングで

百合子は ベッドに 横たわっていた

珍しく
蝉の鳴き声が
聞こえる

精一杯 鳴いているが
一週間の

私の
命は あとどのくらい⁉️

百合子は 

まだまだ
大きくなっていく
レイと マナの
姿が 見たい!

2人を
嫁に出して

孫ができたら

このマンションを 売って

田舎の 一軒家に
引っ越したいね

夫の
和明と
良くそんなことを 話していた

私の
ささやかな人生

夜は
生鮨を 出前で 運んでもらった

病院で
夢にまでみた 生鮨🍣

少しで もう お腹が
いっぱい

好きな 鮪と 帆立だけつまんで

あとは 卵焼きで 締めた

「ママ あんまり
食べられないから

麗と 愛は
沢山食べてね

和明さんも
おばあちゃんもね
今日はありがとう」

和明と 義母の 和江も
軽く お寿司を つまんでいる

楽しい時は あっという間に 過ぎる
夫は 義母を 実家へと 送って行った

「ママと 一緒に 寝るの」と
麗と 愛に せき立てられて

和明は

客室に
ゴロ寝するしかないようだ

「麗も 愛も
ママは
また
おうちに帰るけど

この病気は 繰り返すと
怖い病気なの

パパのこと お願いね🤲

それから インコの ぴーちゃんのことも
ちゃんと 面倒みてね
生き物は 大事にお世話してね」

「ママ 分かったよう
もう眠い」🥱💤と

2人は 寝てしまう

和明が 明け方
リビングに やってきた

「暑くて
喉が渇いてさ」と 水を 飲み干した


「ママは大丈夫❓
どこか 調子悪いことないか?
今夜は 病院まで 送るよ

来週も 一泊だし
9月には 退院出来るんだろう」

夫は 静かに笑った

「多分そうね!」

百合子は ふと思う

帰って来たい

帰れると思う🎶

帰って 食事を 作ったり
買い物したり

歩いたり

病院に
リハビリにも 行こう

運動会の ご馳走を 拵えて

元気になったら 温泉にも行きたい♨️

夢は 無限に 広がっていく

でも
また 病気が 
再発したら

私の
命の火は🔥 どんどん
短くなっていく

だから
いつでも
覚悟はしていて欲しい

それを
和明
夫に
伝えるのは いつなのか?
今なのか?

明け方だというのに
蝉時雨は 激しくなっていく

少し
疲れて 眠くなった

病院に帰るのは 夜だ

もう少し 眠っていても
いいかな

百合子は
起きたら
公園まで歩いて行って

蝉の鳴き声を、命の声を、

蝉時雨を
いっぱいに
聴いてみたいと思った

愛する 夫と 娘たちと。。。一緒に 優しく 肩を並べて。 

(髭男 アポトーシスを 聴きながら
 イメージした 短篇を 書いてみました)

今日の夢色ダイアリーはこのへんで

オカりんでした🍀🍀🍀🍀🍀🍀🍀






















オカりんの 毎日が 四つ葉探し 夢色ダイアリー

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